【芽生】by TAKAKO ISHII

©️2021 DIGINNER GALLERY

ギャラリーでは初となる美術家 石井貴子さんの個展を行いました。
絵手法を変えながらかれこれ30年以上は描き続けている空の絵。
一般的には、広さや奥行き、世界間の豊かさを表現するために背景として描かれることが多いが、石井は広大な空の一部にフォーカスしたり、風や時間によって絶え間無く変化する優美な移ろいを、独自の手法で描いている。
昨年20年以上住んでいたイタリアを離れ、現在日本は北海道を拠点に活動している。
会場吹き抜けに展示した近作は、今年の冬に北海道で制作したもの。
極寒の野外で、塗料をキャンバスの上で操作するうちに、凍ってしまったことで薄らとしたレイヤーが雲の表情にかかり、凍てつく空気の中見上げる空の様子を見事に捉えている。
朝から夜にかけて移ろう色の変化も、一部を切り取ることで、遠い彼方からなんだか音が聞こえてくるようだ。
思い出に残る美しい空の背景は、おおよそ楽しかったり、嬉しかったりした記憶が蘇るのは私だけだろうか。
会場の床に無造作に並べた「塩の結晶」は浄化を招き、また湿度変化によって期間中に結晶が変容する様も見応えがあった。その結晶を利用して製作された2Fの造形作品は、卵のような繭のような塩の塊が、同じ雲に含まれる成分だと思うと、雲の誕生を表したものだったと言えよう。
お越しいただいた皆様誠に有難うございました！

石井貴子の作品は引き続きオンラインショップで販売しております。